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裏庭の鶏

映画と本と、時々舞台

『歌声にのった少年』 感想

 予習をして見ればもっとよかったのかもしれません。映画の日常に溶け込む「非日常」が印象的です。鑑賞後、じわじわと印象深くなる不思議な映画。
 パレスチナ映画は初でした。

 以下ネタバレ含む感想です

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 本作は実話です。それはトレーラーで知っていたのですが、お恥ずかしながらムハンマド・アッサーフについては聞いたことすらありませんでした。ですからポスターやタイトルからムハンマド・アッサーフという少年がアラブアイドルという番組で優勝したお話だとばかり思っていました。


 前半は彼の少年時代を描きます。姉と友人とバンドを組み、なんとか資金を集めて本物の楽器で歌う。そしていつか世界という舞台で歌う。それは彼の姉ヌールの夢でした。

 資金を集めるシーンや闇商人から騙されるシーンなど……。
 どきりとしました。
 闇商人とのやりとりは勿論ですが例えば彼らが自転車で駆け抜けているシーン。ピタリと彼らは自転車を止め無表情でフェンスを見つめます。これまた無知で恥ずかしいのですが、私にはこれがピンとこなくて「軍事区域かな?」と思ってしまいました。けれどムハンマドが青年になりエジプトに行こうとするシーンになりやっとこのフェンスが「国境」だと気が付きました。まだ子どもだった彼らはどんな思いでそのフェンスを見つめていたのでしょうか。

 また片足を失った男性を見て、ムハンマドは何を思ったのか。

 薄い板に隠れながらギターを弾く彼女は大人の女性を見て何を思ったのか。

 などなど……少年時代パートでは「夢を見ることが虚しいだなんて言わせるな」このセリフが強く響きました。だって普通に考えればムハンマドのような境遇の男の子がカイロのオペラハウスで歌うだなんて、虚しい夢に違いないのですから。

 しかしヌールは亡くなってしまう。あまりにあっけなくて呆然としてしまいました。
 そして時は流れムハンマドは青年となりますが、少年時代よりもより映像にどきりとさせられます。
 瓦礫の山、両足を失った男性。どうにもならない現実。

 ムハンマドは青年になりいつも何かに苛立っているように見えました。それは上手くいかない現実であったり、社会に対してであったり、衝動的なものなのだろうと思いました。国境を超えるために有刺鉄線を切ろうとして失敗し、当たり散らすのがとても辛い。
 悲観的になりそうになるけれど諦めることに抵抗し続けもがくムハンマドのたった一つの武器が歌だったのだと思います。
「世界は醜いけれどあなたの声は美しい」
この言葉が何よりも印象的でした。

 ラストの映像は実際のVTRが使用されており当時の熱狂が伝わってきます。
 正直に言ってしまえば不思議なくらいの熱狂でした。


 この映画は作品としてはストーリーに粗があるように思えます。しかし、本作は事実をもとにしているという点において、そしてガザで実際に撮影をしているという点において観る者に何かを訴えかけているように感じられました。
 誰かに勧めたいと思わせる部類の映画ではなかったけど忘れられない映画になりました。


●スタッフ
監督・脚本:ハニ・アブ=アサド

『真田十勇士』 感想

 どうかなって思いつつも邦画時代劇が見たかったので見ました。日曜日の朝に全15話ぐらいのドラマで放送すればファミリー層に受けたんじゃないかと勝手に思いました。派手なアクションは才蔵除き結構好きです。
 けど、全体的にあともうちょっとで面白くなったのでは、と思ってしまいました。これは好みなのかも。

 初日に見に行きましたが結構年齢層がバラけていたのも印象的でした。

 以下、ネタバレ含む感想です。ちょっぴり辛口(特にキャラクターに対して)なのでご注意ください。

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 まず、初っ端からアニメが始まって度肝を抜かれました。本当にびっくりした。しかも長い。
 歴史上の人物が肖像画からぬるっと実写になる演出から始まりわくわくしていたから、アニメが流れて何事かと(笑) しかしアニメパートの長いこと! キャラクター紹介をアニメで表現するなんて斬新と思ったけど長すぎましたね。若干イラついていたらピコーンという音とともに「アニメ映画ではありません。あと数十分で本編が始まります」のテロップ。苦笑。

 スーサイドスクワッドの時も感じたのですが、こういうキャラクター紹介って映画で表現するのは大変だなあと思います。どちらかといえばスーサイドスクワッド式に第三者が紹介していく方法の方が真田十勇士のようにダイジェストでやられるより好きです。

 そうしてやっと実写パート=本編が始まりますが、まだ真田十勇士ではなく真田九勇士。そして登場しない大島優子。ポスターででかでかと出ているから主役級だと思ったけど女性キャラだからポスターに大きくのっていたんですね。十人目は真田九勇士を名乗る浪人、甚八になるわけですが、うん、まあ。なんでほいほい仲間にしちゃうのかこの時点では分からず首を傾げます。この後ネタばらしがきて策士!となりましたが。甚八なんか好きになれなくて(-_-;)

 さて、このお話は大まかに言うとアニメパートで真田幸村と猿飛佐助の出会い〜仲間を集め真田十勇士(アニメパートでは九人まで)を結成までを描き、本編では大坂冬の陣大坂夏の陣を描きます。予告にもありましたがこの物語の幸村はヘタレ男で容姿端麗であるから「たまたま運が良かった」出来事も「策略」と受けとられてしまった、顔がいいと辛い、などと嘆きます。
 そこで佐助が嘘を真にするために真田十勇士真田幸村を助け「世の中に大嘘をつく」訳です。それを知っているのは佐助と彼の幼馴染の霧隠才蔵のみ。

 ストーリー自体はエンタメとして面白そうなのですが……全体的に詰め込み過ぎているのかな、という印象でした。例えば仲間が集まったのは良いけど、特にエピソードがないまま戦に突入するので誰と誰が仲が良かったという情報も匂わせる程度です。苦楽を共にした大切な仲間感もあまり感じられません。だいたいなんでこの人らは真田幸村に仕えているのかも分からない。というか忠誠心というよりも真田幸村すら真田十勇士の仲間のような印象。
 そして真田幸村がヘタレというエピソードも薄いので夏の陣を前に自ら戦略を練り戦いに挑む決意をする幸村にも何か感動があるわけでもなく。死にゆく十勇士の仲間にも感情移入できず。

 もっと彼らの仲間同士のエピソードがあればまだ感動できたかもしれないので本当に色々とおしいです。ただ、戦闘シーンは迫力あったので、いっそアクション映画として変に感動させようとしない方が良かったのではないでしょうか。流石に仲間が死んだだけではあんまり感動できないので。

 色々と文句を書いてしまいましたが、アクションは才蔵のパラグライダーを除いて楽しめたのでそこだけは見に行って良かったと心から思いました。
 
 この作品は舞台もあるそうなので舞台の方はもっとシンプルに、そしてブラッシュアップされているのなら見てみたいと思いました。

 以下、キャラクター別感想です。こちらも少し辛口になりますのでご注意ください。

●猿飛佐助(中村勘九郎
 ギャンギャンと常にうるさいキャラクターが苦手なので思ったよりも彼が苦手な部類のキャラクターだと序盤で感じてしまってあちゃーと思いました。
 が。基本的にぎゃんぎゃんとうるさい佐助も夏の陣前に何かを考えていたり甚八を仲間にしたのは秀頼と似ていたから影武者にするためと匂わせていたりと「策士」らしい面を見せました。
 この佐助は「面白いか面白くないか」で行動する、まるで子どものようではあるものの少年らしい青さがない。子どものように「面白いこと」を追い求める反面大人のように利害をはかることもできるのだろうな。と思いつつも裏切り者がいると言われて激怒したり裏切り者だった十蔵をあっさりと許したり(ここはもしかしたら十蔵がもう裏切らないという自信があったのかも)とやはり裏表があまりなさそうな、無垢な少年のような印象も受けました。決して無垢な少年ではないのでしょうけど(笑)
 
 そして佐助はコメディパートで光ってた! セリフまわしというか、間というか……。確実にうっとおしいヤツなのになぜかクスリと笑ってしまう。特に火垂と才蔵との絡みは最高でした。
 また、真田親子が果てた時の鬼のような形相、才蔵と刺し違えた(フリの)時の死に様が凄い。常にヘラヘラチャラチャラしていた分、本当に悪くてたまらない!という顔にそのまま家康を殺しに行くかと思いました。死ぬ(フリ)時も白目を剥いてガクリと倒れるのが「あ、殺されたんだ」と思わせゾクゾクします。

 でも猿飛佐助は真っ直ぐで自分に正直な気持ちの良いキャラクターだと思います。


霧隠才蔵松坂桃李
 イケメン以外に言うことのないイケメン。どちらかというと可愛い顔だなと思いました。

 佐助と比べてクールで冷酷そうな一面も見せますが、きっと彼は佐助よりも子ども。しかも青さという点で子ども。
 何故彼が抜け忍になったのかイマイ説明不足だったように思えましたがきっと佐助が言っていたのと同じで佐助が抜け忍となった理由と同じか、反抗心で抜け忍になってそう。格好つけたい子どもって感じするんですよね。個人的には夏の陣が終わって船に乗って幼馴染とじゃれ合ってる方がいきいきしていたし才蔵の「素」が出ていた感じがしました。それまでのクールさはクールな自分を必死に演じていたような雰囲気。

 あと!彼に関しては!!パラグライダーシーンで毎度笑ってしまいました!あれはないです!

 
真田幸村加藤雅也
 普通に顔がかっこいい。個人的には情けないエピソードが足りないからラストの男前っぷりになんの感慨も抱けず普通に男前でした。でも真田親子の死に様にはカタルシスを得ることができました。
 でもエピソードとしては足りなかったけど、戦を前にしてぱちぱちと瞬きを繰り返していて本当に緊張している感じしました。応援したくなる(笑)


淀殿大竹しのぶ
 強い女性ですね。かっこよかったし凛としてはいるものの自分勝手でなんとも言えない。結局「母の愛」みたいにオチをつけていましたが…美談っぽくなっていたし……。あまり人間味を感じられなかった淀殿でした。

根津甚八豊臣秀頼永山絢斗
 いったいこいつはなんだったのか。使えない替え玉っぽい立ち位置で仲間との軋轢もあったのにサラッと流されてて……。本当にこいつはなんだったのか。


筧十蔵高橋光臣
 最初に十蔵「ちゃん」なのかなと思ってたのにただのキャラ付けだったのが残念でした。やり過ぎ感が否めなかったけど、最終的にはなかったことになってるあのキャラ付けいるかなあ?
 あと鎌之助の肩に寄りかかって拒否られてるシーンはじわじわツボでした。彼と特に行動していたんでしょうね。夏の陣で背中合わせに鎌之助と戦う(やられる?)シーンは二人とも楽しそうだったのが印象的でした。


由利鎌之助加藤和樹
 イケボ。彼の声とても好きです。上でも書きましたが十蔵とのエピソードがもう少しあれば、十蔵が裏切り者と知った時の切ない顔に説得力があったんだけどなあ。
 しかし鎌之助は無骨な印象を受けますが来世でこうしたい、ああしたい、と話すシーンでほのぼの一家を築きたいと漏らしていたのが印象的。似合わね〜とからかわれていましたが子煩悩な父親になれそうだと思いました。
 最期は弁慶のごとく立ったままでしたが、死に顔が綺麗でした。多分今作の中で死に顔が一番綺麗。

 舞台の方では才蔵を演じているらしく、公式HPを見たら浮世絵に出てきそうな才蔵でした。松坂才蔵は女の子から黄色い声をあげられていそうですが加藤才蔵は女性を侍らせてそうな顔してますね。


●三好青海(駿河太郎)・三好伊三荒井敦史
 すいません。どっちがどっちだか分からなくなってました。駿河太郎さんは一度拝見しているのに……(-_-;)
 完全に賑やかし要因になってましたね。こういうキャラも嫌いじゃないですが、ドレッドヘアに驚いた。でも彼らはあくまで才蔵の手下で真田幸村の家臣ではないんだろうなあと漠然と思いました。


海野六郎村井良大
 死んでもカタルシスを得ることができなかったのが自分でも驚き。でも他の十勇士に比べてちゃんと真田幸村の家臣だったので好きです。

望月六郎(青木健)
 死に様が好き。勢いが他の追随を許さない。彼の活躍がもっと見たかったです。

真田大助(望月歩)
 滑舌やら演技やらが子役っぽい印象だと思っていたら2000年生まれでした。舌っ足らずで情けなくてふわふわしていて、家康のところに行くまでに落馬して死にそうだなと思いましたが意外と男を見せていましたね。


●火垂(大島優子
 正直、このキャラクターいるかなあというのが見終わった直後の感想。今思うと不二子ちゃん的な立ち位置なのかも。
 火垂は佐助の言う「すっごい女の子」の方が素で、クールに振る舞うのは無理しているのだと感じました。くノ一に生まれていなかったら可愛い娘さんになっていたに違いない。


●仙九郎(石垣佑磨
 パンクな忍者。才蔵だけ狙って佐助を狙わない理由が最後まで分からなかったんです。火垂のこと好きだったの?


 全体を通してなんともおしい作品でした。いつかドラマ化とかしたら一話だけでも見てみようかな。

監督:堤幸彦
脚本:マキノノゾミ
   鈴木哲也
制作指揮:中山良夫
制作:大角正
   佐藤直樹
   熊谷宣和
   薮下維也
   永井聖士
   安部順一
   弓矢政法
   長坂信人
美術:清水剛
音楽:ガブリエル・ロベルト
 

『スーサイド・スクワッド』 感想

 巷で酷評されているけど面白かったと思います。粗があるストーリーだったけどそれを圧倒するヴィジュアルだった。なので大画面の方が楽しめるし、くらくらと極彩色に酔えるのが新鮮でたまりませんでした。
 以下、ネタバレ含む感想です。

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 この作品はアメコミが原作なわけですが、私はアメコミを読んだこともなくアメコミ原作の映画を欠かさず見たわけでもありません。なので今回の登場人物で知ってるキャラクターはゲストキャラのジョーカーぐらいでした。ちなみにそのジョーカーはティム・バートン版バッドマンのニコルソンジョーカーです。彼の真っ白な顔に歪に引きつった笑顔が大好きでした。もとからクレイジーだったのではなく、その笑顔のせいで狂わざるを得なかったというのを覗かせるのも好き。だから今回のジョーカーはきっと違う方向性だろうなと思っていたので正直期待はしていませんでした。そしたら、まあ、まさしくゲストだった(笑)
 閑話休題。ともかく原作ファンでもないのである意味偏見なく見れました。あとで知ったのですが、これバッドマンvsスーパーマンの続編だったんですね。見なくても「バッドマンとスーパーマンがいる世界でスーパーマンは死んでいる」という情報は分かるし、正直その情報もオマケみたいな物なので一見さんに優しい映画です。

 けれど、やはり原作ありきで色々な作品のヴィランが集合していますからキャラクター紹介は必要らしく(そもそも既に逮捕されているところから物語は始まってますし)最初はずっとキャラクター紹介。この辺でどのキャラが主役級でどのキャラが脇役か分かる仕様でした。扱いに差がある(笑)
 このシーンは「まだやるの?」と思う反面、キャラクター毎に音楽や色彩に個性が出ていて面白いです。ハーレイのシーンでジョーカーがサイコパスということが分かり、ヴィジュアルも含めてニコルソンジョーカーとは全く別物として見れました。ハーレイのシーンは特に色彩がドギツくて酩酊感があります。あとデッドショット。子供が弱点とありましたがあんまりお涙頂戴に感じず単なるキャラ付なんだとこの時点では思いました。

 キャラクター紹介が終わると政府のエラい人、ウォーラーが彼らを使って決死部隊を作ろうとするシーン。彼女は既に千年を生きるというチート急の魔女エンチャントレスを手にしています。博士もエンチャントレスも美人ですね。エンチャントレスはメイクでよく分からないけど。
 しかしエンチャントレスは心臓を取られているから操られているわけで、機会を見て逃げ出そうとしている模様。これはもうフラグですね。案の定エンチャントレスは逃げ出すのですが、この辺りが少し雑でした。心臓がなくても彼女の弟が人間の体を乗っ取って姉に力を与えると平気なのは…。でもまあそのへんは目を瞑りましょう(笑)

 そして地下鉄で暴れる化物退治にスーサイドスクワッドが駆り出される! のですが、完全に寄せ集めチームで首の小型爆弾で言うことを聞かせるわけです。まあそうなるよね、と。彼らをまとめるのはフラッグなのですが、なんだろう……彼は普通にかっこいいと思うのですが ピーチ姫かな? いかんせん敵にやられそうになって助けられるというパターンが多い(笑)
 しかもここでは敵は「地下鉄のテロリスト」と言ってるんですね。お前らに知る権利なんてない!ということかな、と思っていたらエンチャントレスが逃げたことを隠蔽してたということらしい。いやいや、どう見ても敵は謎の生物だしテロリストは無理があるだろ、と。結局エンチャントレスは世界征服と人間の滅亡のために動いてましたが、それほど過去に自分達を神と崇めていた人間に心臓を奪われたことが悔しかったのですねえ。で、心臓なくても大丈夫なの?

 途中でジョーカーがハーレイを助けに来たりハーレイを撃ち殺せと言われたデッドショットがわざとミスったり直後ジョーカーとハーレイが乗ったヘリが爆破されたり。かなりハーレイとジョーカーにフォーカスが当てられてました。

 その後、自分達が何と戦わされているのか知った彼らがバーで会話しながら最終的にはエンチャントレスと戦うことを決めていきます。この辺一番雑だと思った。でもディアブロが自分の力を暴走させて、しかも自分の癇癪のせいで愛する家族を殺してしまったと告白するシーン。お涙頂戴ではなくハーレイに「背負いなさいよ」と言われるのが良かったです。ハーレイは傷をえぐるなと責められていましたが。その時のハーレイはジョーカーを失っていますからねえ。
 そしてこのシーンで今回のサブテーマとして愛(男女の愛、家族の愛)があるんだなあと思いました。かなりエンタメにふった愛ではありますが、おかげでヴィラン達の人間臭さが出ていたしどぎつい個性以外のキャラクターの個性が見えた気がして良かったです。とってもベタだったけど、こういう作品はベタな方がいいかも。

 エンチャントレスとの対決の直前の魔女が見せる幻想にも彼らの個性が出ていた感じがしてとても面白い。しかもその幻想から立ち直ったのが先程ハーレイに背負いなさいよと責められたディアブロというのが感慨深いですね。そしてなんだか仲間意識の芽生えたスーサイドスクワッドはなんとかエンチャントレスを倒すことができ、なんとなく前とは違った自分になりました。
 みたいなお話。

 振り返ってみると粗が結構見えるのですが、いかんせん画面がどぎついのでそっちに圧倒されます。それに、小ネタの聞いたギャグが面白いですし、なんといってもキャラクターが全員ぶっ飛んでますからそれだけで満足感ありました。

 以下キャラクター別の感想です。

ハーレイ・クインマーゴット・ロビー
 可愛い。公式HPにはアイドルと紹介されていたけどアイドルではなかった(笑)
 ジョーカーに対して一途だけどまだハーレイ・クインになる前の「自分が壊れるのは怖いけどジョーカーは愛してる」みたいな微妙な表情が個人的にツボでした。あと、階段で下を見下ろしながら酸の中にジョーカーと飛び降りたことを思い出して泣きそうになってるハーレイが好き。とことんジョーカーが好きなんだなあと感じられて可愛いです。
 それと、少し声がダミ声になる瞬間があって、可愛い顔から微妙に汚い声が出てくるギャップがたまりません。

 でも友達をイジメんな!(日本語訳)って言ってたのは意味不明でしたが、ハーレイも短い間でも群れてたら本当に「お友達」になった感覚なんだろうなあと思いました。ハーレイの場合、地球の命運云々よりも「お友達」や「恋人」を優先させちゃうような気がします。要するに自分勝手な子供みたい。しかも空気読めない(笑)
 エンチャントレスが見せた幻想では普通のお嫁さんになっていて、それに対して「お嫁さん♡」とうっとりしていて子供っぽい。

 最後に、武器でバットやらハンマーを持っているのが可愛いです。物理。
 

●デッドショット(ウィル・スミス)
 主人公。どう見ても主人公。かっこいいです。いいところは彼がほとんど持っていった印象。正統派にかっこいいので語るべきことは少ないですが、最後にハグの練習?をしていたのが地味にツボです。


エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)
 この作品でカタルシスを得られたのは彼のシーンかな、と。チート級に強いのに自分の力にトラウマを抱えているなんて、少年漫画っぽいです。よくあるもともとは悪人じゃないけど環境のせいでそうなっちゃったんです〜みたいなキャラクター。たしかにそうなんだけど、犯してしまったことは変えられないのでお涙頂戴な雰囲気になったら嫌だなあと思っていたらハーレイが「背負いなさいよ」と一喝したので取り敢えず良かったです。
 最期はエンチャントレスの弟と爆発。ただの爆弾で死ぬの?と思いましたがいいところ持っていきましたね。いい意味で予定調和な感じ。そこが心地よかったです。だがトゥルーフォーム?なのか炎の神様っぽい姿になった時は昔見た日曜日の朝の特撮を思い出してしまった(笑) アメコミだとあの手のはお約束なんでしょうか…?
 あと、顔のタトゥーが素敵。本来の顔も見たいです。

 元ネタのコミックが読みたくなったキャラクターでした。


●リック・フラッグ(ジョエル・キナマン
 本作のマトモ枠で凄腕の軍人という設定でした。しかしピーチ姫敵にはよくやられそうになって助けられるシーンがやたら印象的だった。普通にかっこいいんですけどね……。直前に戦おうとしないディアブロが「プリンセスか?」と煽られていたので「いやむしろフラッグ大佐がプリンセス……」と思ってしまいました。次は(あるか分からないけど)戦闘シーンで見せ場があるといいね!


●エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)
 ラスボス。公式HPの50倍は綺麗な顔してました。じとっとしたいわゆるジト目が可愛い。しかしトゥルーフォーム?力を手に入れた姿はなんとなく受け入れがたい格好をしてましたね。彼女は結局人間に復讐したかったのかな、と思います。
 幻覚を見せる、瞬間移動、憑依の力を持っているようですが結局戦うときは物理だったので弟の方が強いんでしょうね。弟も物理だったけど。


●カタナ(福島かれん)
 思ったよりもちゃんと日本でした。取り敢えず中国とかベトナムとか、他の国の要素がなく、ちゃんと日本でした(笑)
 彼女は用心棒で、死んだ旦那の魂が閉じ込められた魂を喰らう妖刀を操ります。設定は結構好き。特に単純ですが泣きそうな、でも嬉しそうな声で「ここで死んだらあなたと一緒になれる」と言っていたのは良かったです。性格としてはクールで感情の読めない人物として描かれていますから、そんなカタナの感情が見えるシーンにはグッときます。

 そんな彼女のシーンでお気に入りなのは「ナイストゥミーチャ☆」と言ったハーレイに対して「殺すか」と返したシーンです。


●キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー
 名前を公式HPで知りました。何故キャプテンなのか分からないので元ネタが地味に気になります。
 見た目はただのおっさんだったけど、要所要所でいい味出してたかなあと思います。彼のシーンで好きなのはハーレイに手厳しいシーンと妖刀に話しかけるカタナにふざけた感じでアプローチするシーン。

 で、ぬいぐるみフェチって設定はどうなったの?


キラー・クロック(アドウェール=アキノエ・アグバエ)
 見た目のインパクトの割に空気で何だかなあと思ってしまいました。彼のシーンで好きなのは「俺は美しい」と言ってニヤリと笑うシーン。とてもとてもかっこいいです。もしも次があれば彼の活躍を見たいなあと思いました。


●アマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス
 スーサイドスクワッドを編成した張本人。だいたいこいつのせい。ヴィランで編成された部隊を作るならこれぐらい冷徹かつ非情な方がいいのかな、と、途中まで思っていました。例えやり方がゲスでも自分の仕事を完遂するために悪役に徹するキャラクターは「ゲスいから酷い死に方するだろうな、してほしいな」と思うこともありつつ嫌いじゃないんですね。

 しかし。

 しかし、このウォーラーは本当にただのゲスだった。びっくりしました。突き抜けてゲスだったのでなるべく未練なくやられてほしいです(笑)


ジョーカー(ジャレッド・レト
 ゲストキャラ。といってもハーレイ関連ではなくてはならない存在です。
 ポスターだとだいぶ出張るので主役級なのかと思っていたら登場シーンが少なくて驚きでした。でもジョーカーファンでもないのでこれぐらいで丁度よかったのかも。それに私はニコルソンジョーカーが好きなので……^^;

 このレトジョーカーはサイコパス感が強く分かりやすい狂気だったので「こいつ、ヤバイぞ!」とは思うもののニコルソンジョーカーのように「なんだかよく分からない不気味さ」はなかったかなと思いました。
 ただ、とても良かったのは手の甲に掘られた笑顔のタトゥー。これを口元に持っていくシーンはおおっ!と思います。ヴィジュアル的にも最高でした。それから酸の中に飛び込んでいくシーン。あのシーンが一番「イッちゃってる」感じがしてゾクゾクしました。こういうシーンが沢山見たいなあ。



 長くなりましたが、全体を通して気軽に見ることができるパンクで刺激的なエンタメとしてとても面白い映画でした。ヴィジュアルだけでも満足できます。音楽はボヘミアンラプソディーのサビを流さなかったのは意図的なのかなんなのか(笑)細かい部分で気になることは多いですが許容範囲。
 私の映画の引き出しは浅いのですが、刺激が欲しくてちょっぴりバイオレンスな映画が見たい、でもタランティーノみたいなクライム映画はちょっと…な気分のときに気軽に見れるなと思いました(笑)



監督:デビッド・エアー
製作:チャールズ・ローベン
   リチャード・サックル
製作総指揮:ザック・スナイダー
      デボラ・スナイダー
      コリン・ウィルソン
      ジェフ・ジョンズ
脚本:デビッド・エアー
美術:オリバー・スコール
衣装:ケイト・ホーリー
音楽:スティーブン・プライス

『超高速!参勤交代 リターンズ』 感想

 なんだろう。続編だからどうかなって思って期待値下げて見たのにあまりに面白くなくて悪い意味で期待を裏切ってきたな、と。佐々木蔵之介がかっこいいことだけがせめてもの救いだった。キャラクターではなくて、佐々木蔵之介が、かっこよくてよかった。

 以下、辛口になってしまうと思います。あとネタバレもあります。ご了承ください。

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 あまりにもひどすぎたので動揺しています。前作を見た時はお金がない中でなんとか人数を誤魔化しながらも参勤交代を成し遂げるコメディで少し人情話のようなパートやチャンバラシーンがあったりとバランスよく楽しめたのですが……。今回はチャンバラメインにしたいのか人情話にしたいのかコメディにしたいのか、バランスが悪いように思えました。
 前作のようなコメディが少な目だったのでそれを求めていたら結構ガッカリしてしまいました。

 そして何より人情話のようなコメディなしのシーン、粗が目立ちすぎててストレスが(-_-;)
 例えばお咲が村人から受け入れられているシーン、ご都合主義だなあと思ってしまいました。もっと説得力のある理由がほしかったなあ。わざとらしく受け入れられているのがなんとも……。せめて一般人がひれ伏すぐらいのカリスマがあればよかったのかなと思います。
 そして1000人対7人。いくらなんでもそれはない。敵に囲まれながら「お前、ここで暮らさねえか」という内藤。思わず「はあ?」と声が出そうになりました。本気で意味がわからない。この辺りから佐々木蔵之介のかっこよさだけに集中しないと見れたものじゃなかったのに佐々木蔵之介に首を傾げることになろうとは…(-_-;)
 あと知念くんのドリルの矢は笑うところだったんでしょうか。

 全体的に首を傾げていたし、時にはストレスさえたまってしまいました。ここ最近見た映画の中ではぶっちぎりに面白くなかったのですが、前作が面白かっただけに怒りさえ湧いてくる。
 とはいうものの、劇場内には笑いも起こっていたので好みによるのかもしれません。コメディ映画って難しい。

スタッフ
監督:本木克英
原作・脚本:土橋章宏
製作総指揮:大角正
音楽:周防義和
美術:倉田智子

『神様の思し召し』 感想

 イタリア産ハートフルコメディ映画。でも根底にあるのはキリスト教なのかも。と言ってもコメディタッチに描かれていますし、重苦しくもないので見やすいかなと思いました。

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 この物語はトンマーゾとその家族の物語です。天才だが傲慢な外科医のトンマーゾが拗れた家族関係を目の当たりにして変化していく様が、軽快な音楽とともにコメディタッチに描かれていました。
 コメディとシリアスのバランス、そしてストーリー展開の速度が心地よく、物語の中にすっと入り込めた作品です。そして、なんだか考えさせる映画でした。軽快でコミカルなシーンも多く、気疲れもしないのですが、考察したくなる映画。


 まず、コミカルで思わずクスリと笑ってしまったシーンは娘のビアンカとその旦那さん(名前を忘れてしまった(;´・ω・))のシーンのほとんど(笑)
 例えば娘のビアンカが弟のアンドレアが神父になりたいというから試しに聖書でも読んでみるかと屋上でジュースやらソファやらをセットするんです。その時点でだいぶ面白いのですが、聖書を読み始めると延々と続くイエスの系図(笑) だんだん彼女の目が死んでいく様にクスリとしました。
 そのビアンカの旦那さんは重度の知的障害を持つフリをするシーンがコメディパートとしては印象的でした。日本じゃああいったシーンは見ることは出来ないでしょうね……。私自身も見ていて笑っていいものかどうか戸惑ってしまいましたし。蔑視するような意図は感じられなかったので不快感はなかったのですが、こういったネタで笑いを誘うというのは初めてで驚きました。日本がそういうものに対してセンシティブなのか、たまたまこの映画が「冒険」しているのかは分かりませんが、文化の違いということなのでしょうか。

 閑話休題。そして、ストーリーも素敵だったのですが街や食べ物が素敵! 食べ物もいちいち美味しそうですし、街の雰囲気も素敵です。この映画はイタリアの街の美しさを売りにしているわけでもないのに、バイクで駆け抜ける夜の街だったり病院の内装であったりがなんだかお洒落。イタリアには訪れたことがないのですが、旅行したくなってしまった(笑)



 さて、この映画を見た後に一番感じたのは「神様の思し召しとは何だったのか?」ということでした。
 映画を見た後に咀嚼しようと思って色々と考えようとしましたが、なかなかこれが難しい。

 私はトンマーゾら家族がピエトロ神父と出会ったことが「神様の思し召し」だったのではないかと思いました。ちょっと宗教寄りの解釈かなとは思いますが(笑)

 それに至ったのは、

・ピエトロとは誰か?
・神父が家族にもたらしたものは何か?
・トンマーゾはなぜ変化しえたのか?
・神とは何か?

これらを考えていったからなのですが、まず、ピエトロは普通の神父です。何か特別なことをしていない。神父として行動したにすぎないし、特別にトンマーゾら家族に介入をしたわけでもない。しかし、彼も根っからの神父であったのではない。これが前提です。

 ピエトロについて深く語られることはありませんでしたが、彼が神父になるのに何か劇的なことがあったわけではないことは分かります。と、いっても所謂〈罪人〉が改心して神父になるのですから劇的といえば劇的ですが。取り敢えずそこはおいておいて、彼はただ〈神を感じた〉のでしょう。
 そんなピエトロ神父は聖人ではありません。だからトンマーゾとも友人になりえたのかも。トンマーゾとピエトロはピエトロが神父であることを前提としつつ、そしてトンマーゾが信者ではないことを前提としつつ、〈ピエトロ〉と〈トンマーゾ〉として友人になっていたように見えました。

 では 「神父が家族にもたらしたものは何」か。私は閉鎖的であった家族に新しい風をもたらしたのだと思います。
 最初はアンドレア。彼は「神父」に感化され自身も神父を目指します。印象的だったのがアンドレアが医者になる未来に虚無を感じていたこと、そして改めて人生に目標が必要だと語っていたことです。家族の水面下での軋轢が見え隠れ。トンマーゾはアンドレアを愛し期待していますが息子にそれは伝わっていない、むしろ押しつぶしていたとうかがわせます。
 しかしここでちょっと面白かったのが、トンマーゾは表面上は理解を見せることです。息子には寛大なところを見せたい父親。偏見ですが日本のドラマだったら頑固親父で絶対反対!と怒鳴りそうだと思った(笑)

 次に妻のカルラ。彼女は間接的ではありますが、アンドレアの言葉によって抑えていた感情を爆発させてしまいます。長年抱えていたけど見ないふりをしていた不満のパワーは凄い。あの夫婦喧嘩もこの物語の軸だったと思いました。廊下ですれ違ったときに中指立てたり毒を吐いたりしたのは上品な見た目とのギャップで笑ってしまいましたが(笑)神父と出会ったアンドレアによってカルラは一番「自分を見つめ直してしまった」のかも。

 そして娘のビアンカも少なからず変化させられたのでは。母親のカルラと父親のトンマーゾの夫婦喧嘩を目の当たりにして隠していたことを表に出します。

 これらのことを通じてトンマーゾも変わらざるをえなくなったのじゃないでしょうか。否が応でも自分を見つめ直さなくてはならなくなったわけですし。あと多少立場の違うトンマーゾとの交流によってエリート思想というか、エベレストみたいに高いプライドもちょっとは捨てたのかなと感じました。
 まあトンマーゾの変化については少し急な感じがして完全に咀嚼できたわけではないのですが……(^_^;)
 普通にトンマーゾとは友人になれていたんだろうなと思います。

 こう考えていくと、神様の思し召しだったのはピエトロとトンマーゾら家族の出会いだったのだろうと思いました。
 もしもピエトロが可憐な少女だったら天使って思ってたかも(笑)



 最後に。おそらくトンマーゾは神の存在を信じないままでしょう。私はそう思いました。ただ、もしかしたらちょっとだけ存在を「感じた」かもしれない。
 最後のシーンで梨が落ちるのを見てトンマーゾは少しだけ笑いました。ここの解釈は色々あるでしょうが、梨が落ちるのをは神の業だと言った神父を思い出していたのは間違いありません。瀕死の、しかもおそらくは助からないであろう神父のことを思い出しているトンマーゾの前でタイミングよく落ちる梨に浮かべた笑いは「神だなんて馬鹿馬鹿しい」あるいは「なんて偶然なんだろうか」といった類のものに見えました。



 長くなりましたが、テーマが宗教的に感じた割にサクッと見ることができ、なおかつ笑える部分もあり、大満足の映画でした。
 またこんな映画に出会いたい……!


監督・脚本:エドアルド・ファルコーネ
出演:マルコ・ジャリーニ
   アレッサンドロ・ガスマン
   ラウラ・モランテ
   イラリア・スパダ
   エドアルド・ペーシェ
   エンリコ・オティケル
配給 ギャガ
制作国 イタリア(2015)

ジャンプ『約束のネバーランド』第四話 感想(ネタバレ注意)

 約束のネバーランド、今更ながら読みました。ちょっと展開が早いかも?
 今回ついにエマ、ノーマンにレイが加わった訳ですが。話の展開としてレイの飲み込みが早いのが違和感でしたね。それぐらい頭がいいっていうのにも無理があります…。

 と、それはさておき、やはり全員の脱出は無理そうだという結論になってしまいますよね。仕方がないのかも。しかしエマは諦めない。いや、諦めたくないのかもしれません。頭がいい彼女ですから諦めなくてはならないということを理解しつつそれを敢えて理解しないという選択をしたのかな、と思います。
 あるいは、ノーマンの言う通り恐怖ではなく家族が死んだことに泣ける子なのだから諦めるというのはもとから選択肢にない、自分を助けるという発想がないから全員助かる以外の選択肢を排除している、のかもしれないですね。
 そしてノーマンに死亡フラグがたってしまった気がします…。エマのためなら喜んで犠牲になりそうなノーマン。一歩間違えたらエマのためにハウスの兄弟たちをも駒にしかねないな、と思ってしまいました。まあそんな展開はない……でしょうけど(笑)

 週刊誌だと仕方がない部分はありますが、一話からここまでずっと導入なわけです。そろそろ次の展開が欲しい…けれど、丁寧なストーリーであってほしい……。難しいですね(-_-;)

小説フランス革命2『パリの蜂起』 感想

小説フランス革命2『パリの蜂起』
佐藤賢一

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フランス全土が飢饉にあえぐ中、政治改革の意欲に燃えて全国三部会に乗り込んだミラボーロベスピエール。しかし、僧侶と貴族の特権意識のせいで、議会は全く進まない。反発して国民会議を立ち上げた平民代表部会は、王の軍隊に威圧され、大衆に人気の平民大臣ネッケルも罷免された。たび重なる理不尽にパリの民衆が激怒、弁護士デムーランの演説に立ち上がる!

(あらすじより)

 ようやく読めました。今回はかの有名な球戯場の誓いからデムーランの「武器を取れ」の演説まででした。

 今回も引き続きミラボーロベスピエールを中心に展開していきましたが、ミラボーの身体的衰えが苦しいです。精神的にはまだまだ革命家然(ミラボーを革命家というのも変な言い方になりますが)としているのですが。特に球戯場の誓いでうるさくて頭痛がすると頭を抱えているのには驚きました。あの辺の歴史物だとここの場面はドラマチックに描かれるものだとばかり思っていたので……。
 そしてミラボーの焦りのようなものも見え隠れします。前回では自信にあふれ「これからやってやるぞ」といった感じ。一方今回はひたすら焦っているような。自分の思うように事が運ばず、そしてどんどんと悪い方向へと転がっていることへの焦り、そしてそれに気が付かない周囲への苛立ちがないまぜになっているようです。

 しかし、やはり革命の「ライオン」らしいところをパレロワイヤルで見せてくれました。デムーランを焚き付けるシーンでは一巻で見たようなミラボーの姿があり相変わらず下品なのも、徐々に衰えを見せていたせいか、何故かほっとします(笑)


 そしてその対比としても印象的だったのがロベスピエールの人間的弱さでした。

 ミラボーが鋭い観察眼でもって政治をしているよに対し、ロベスピエールはどこか浮ついている。歴史的に見れば彼の方がよほど苛烈な印象を与える人物であるのにもかかわらず、ミラボーからすれば「他よりはマシ」という存在なのではと思わせるほど。危機的な状況にあるフランスをなんとかしなければならないという熱意は十分にあるのですが、それがどうも空回りしてしまっているというか、具体的でないというか。ミラボー同様に「焦っている」のが痛いほど伝わります。
 そしてロベスピエールミラボーの大きな違いはロベスピエールが暴力を恐れているという点でしょう。臆病と言ってもいいのかもしれませんが、殺されるかもしれない恐怖に涙を浮かべて爪を噛みながら震えている姿はなんだかとてもリアルに感じます。1巻を読んだ時から思ってたけど、どうしたらこの人が多くの人をギロチン送りにするのか分からない。でもミラボーを信頼しミラボーを慕っている様子はなんだか微笑ましいです。


 そして今回はようやくデムーランが活躍し始めました! 1巻だと妙に格好がつかない、恋人が大好きな青年といった感じでしたが今回は覚醒した感じがします。暴力を目の当たりにしてくらっとしちゃうけれど、なんとか踏ん張って頑張るので応援したくなりますね。ミラボーつ違って自分が英雄だと自信満々になるのではなく「英雄になるんだ」と一生懸命なデムーランはかっこいいです。ぜひ頑張ってほしい、と思いつつもロベスピエールに愛妻ともども処刑されるのを知っているから微妙な気持ちになります…。切ない。