小説フランス革命2『パリの蜂起』 感想
フランス全土が飢饉にあえぐ中、政治改革の意欲に燃えて全国三部会に乗り込んだミラボーとロベスピエール。しかし、僧侶と貴族の特権意識のせいで、議会は全く進まない。反発して国民会議を立ち上げた平民代表部会は、王の軍隊に威圧され、大衆に人気の平民大臣ネッケルも罷免された。たび重なる理不尽にパリの民衆が激怒、弁護士デムーランの演説に立ち上がる!
(あらすじより)
ようやく読めました。今回はかの有名な球戯場の誓いからデムーランの「武器を取れ」の演説まででした。
今回も引き続きミラボーとロベスピエールを中心に展開していきましたが、ミラボーの身体的衰えが苦しいです。精神的にはまだまだ革命家然(ミラボーを革命家というのも変な言い方になりますが)としているのですが。特に球戯場の誓いでうるさくて頭痛がすると頭を抱えているのには驚きました。あの辺の歴史物だとここの場面はドラマチックに描かれるものだとばかり思っていたので……。
そしてミラボーの焦りのようなものも見え隠れします。前回では自信にあふれ「これからやってやるぞ」といった感じ。一方今回はひたすら焦っているような。自分の思うように事が運ばず、そしてどんどんと悪い方向へと転がっていることへの焦り、そしてそれに気が付かない周囲への苛立ちがないまぜになっているようです。
しかし、やはり革命の「ライオン」らしいところをパレロワイヤルで見せてくれました。デムーランを焚き付けるシーンでは一巻で見たようなミラボーの姿があり相変わらず下品なのも、徐々に衰えを見せていたせいか、何故かほっとします(笑)
そしてその対比としても印象的だったのがロベスピエールの人間的弱さでした。
ミラボーが鋭い観察眼でもって政治をしているよに対し、ロベスピエールはどこか浮ついている。歴史的に見れば彼の方がよほど苛烈な印象を与える人物であるのにもかかわらず、ミラボーからすれば「他よりはマシ」という存在なのではと思わせるほど。危機的な状況にあるフランスをなんとかしなければならないという熱意は十分にあるのですが、それがどうも空回りしてしまっているというか、具体的でないというか。ミラボー同様に「焦っている」のが痛いほど伝わります。
そしてロベスピエールとミラボーの大きな違いはロベスピエールが暴力を恐れているという点でしょう。臆病と言ってもいいのかもしれませんが、殺されるかもしれない恐怖に涙を浮かべて爪を噛みながら震えている姿はなんだかとてもリアルに感じます。1巻を読んだ時から思ってたけど、どうしたらこの人が多くの人をギロチン送りにするのか分からない。でもミラボーを信頼しミラボーを慕っている様子はなんだか微笑ましいです。
そして今回はようやくデムーランが活躍し始めました! 1巻だと妙に格好がつかない、恋人が大好きな青年といった感じでしたが今回は覚醒した感じがします。暴力を目の当たりにしてくらっとしちゃうけれど、なんとか踏ん張って頑張るので応援したくなりますね。ミラボーつ違って自分が英雄だと自信満々になるのではなく「英雄になるんだ」と一生懸命なデムーランはかっこいいです。ぜひ頑張ってほしい、と思いつつもロベスピエールに愛妻ともども処刑されるのを知っているから微妙な気持ちになります…。切ない。