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裏庭の鶏

映画と本と、時々舞台

『スーサイド・スクワッド』 感想

映画

 巷で酷評されているけど面白かったと思います。粗があるストーリーだったけどそれを圧倒するヴィジュアルだった。なので大画面の方が楽しめるし、くらくらと極彩色に酔えるのが新鮮でたまりませんでした。
 以下、ネタバレ含む感想です。

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 この作品はアメコミが原作なわけですが、私はアメコミを読んだこともなくアメコミ原作の映画を欠かさず見たわけでもありません。なので今回の登場人物で知ってるキャラクターはゲストキャラのジョーカーぐらいでした。ちなみにそのジョーカーはティム・バートン版バッドマンのニコルソンジョーカーです。彼の真っ白な顔に歪に引きつった笑顔が大好きでした。もとからクレイジーだったのではなく、その笑顔のせいで狂わざるを得なかったというのを覗かせるのも好き。だから今回のジョーカーはきっと違う方向性だろうなと思っていたので正直期待はしていませんでした。そしたら、まあ、まさしくゲストだった(笑)
 閑話休題。ともかく原作ファンでもないのである意味偏見なく見れました。あとで知ったのですが、これバッドマンvsスーパーマンの続編だったんですね。見なくても「バッドマンとスーパーマンがいる世界でスーパーマンは死んでいる」という情報は分かるし、正直その情報もオマケみたいな物なので一見さんに優しい映画です。

 けれど、やはり原作ありきで色々な作品のヴィランが集合していますからキャラクター紹介は必要らしく(そもそも既に逮捕されているところから物語は始まってますし)最初はずっとキャラクター紹介。この辺でどのキャラが主役級でどのキャラが脇役か分かる仕様でした。扱いに差がある(笑)
 このシーンは「まだやるの?」と思う反面、キャラクター毎に音楽や色彩に個性が出ていて面白いです。ハーレイのシーンでジョーカーがサイコパスということが分かり、ヴィジュアルも含めてニコルソンジョーカーとは全く別物として見れました。ハーレイのシーンは特に色彩がドギツくて酩酊感があります。あとデッドショット。子供が弱点とありましたがあんまりお涙頂戴に感じず単なるキャラ付なんだとこの時点では思いました。

 キャラクター紹介が終わると政府のエラい人、ウォーラーが彼らを使って決死部隊を作ろうとするシーン。彼女は既に千年を生きるというチート急の魔女エンチャントレスを手にしています。博士もエンチャントレスも美人ですね。エンチャントレスはメイクでよく分からないけど。
 しかしエンチャントレスは心臓を取られているから操られているわけで、機会を見て逃げ出そうとしている模様。これはもうフラグですね。案の定エンチャントレスは逃げ出すのですが、この辺りが少し雑でした。心臓がなくても彼女の弟が人間の体を乗っ取って姉に力を与えると平気なのは…。でもまあそのへんは目を瞑りましょう(笑)

 そして地下鉄で暴れる化物退治にスーサイドスクワッドが駆り出される! のですが、完全に寄せ集めチームで首の小型爆弾で言うことを聞かせるわけです。まあそうなるよね、と。彼らをまとめるのはフラッグなのですが、なんだろう……彼は普通にかっこいいと思うのですが ピーチ姫かな? いかんせん敵にやられそうになって助けられるというパターンが多い(笑)
 しかもここでは敵は「地下鉄のテロリスト」と言ってるんですね。お前らに知る権利なんてない!ということかな、と思っていたらエンチャントレスが逃げたことを隠蔽してたということらしい。いやいや、どう見ても敵は謎の生物だしテロリストは無理があるだろ、と。結局エンチャントレスは世界征服と人間の滅亡のために動いてましたが、それほど過去に自分達を神と崇めていた人間に心臓を奪われたことが悔しかったのですねえ。で、心臓なくても大丈夫なの?

 途中でジョーカーがハーレイを助けに来たりハーレイを撃ち殺せと言われたデッドショットがわざとミスったり直後ジョーカーとハーレイが乗ったヘリが爆破されたり。かなりハーレイとジョーカーにフォーカスが当てられてました。

 その後、自分達が何と戦わされているのか知った彼らがバーで会話しながら最終的にはエンチャントレスと戦うことを決めていきます。この辺一番雑だと思った。でもディアブロが自分の力を暴走させて、しかも自分の癇癪のせいで愛する家族を殺してしまったと告白するシーン。お涙頂戴ではなくハーレイに「背負いなさいよ」と言われるのが良かったです。ハーレイは傷をえぐるなと責められていましたが。その時のハーレイはジョーカーを失っていますからねえ。
 そしてこのシーンで今回のサブテーマとして愛(男女の愛、家族の愛)があるんだなあと思いました。かなりエンタメにふった愛ではありますが、おかげでヴィラン達の人間臭さが出ていたしどぎつい個性以外のキャラクターの個性が見えた気がして良かったです。とってもベタだったけど、こういう作品はベタな方がいいかも。

 エンチャントレスとの対決の直前の魔女が見せる幻想にも彼らの個性が出ていた感じがしてとても面白い。しかもその幻想から立ち直ったのが先程ハーレイに背負いなさいよと責められたディアブロというのが感慨深いですね。そしてなんだか仲間意識の芽生えたスーサイドスクワッドはなんとかエンチャントレスを倒すことができ、なんとなく前とは違った自分になりました。
 みたいなお話。

 振り返ってみると粗が結構見えるのですが、いかんせん画面がどぎついのでそっちに圧倒されます。それに、小ネタの聞いたギャグが面白いですし、なんといってもキャラクターが全員ぶっ飛んでますからそれだけで満足感ありました。

 以下キャラクター別の感想です。

ハーレイ・クインマーゴット・ロビー
 可愛い。公式HPにはアイドルと紹介されていたけどアイドルではなかった(笑)
 ジョーカーに対して一途だけどまだハーレイ・クインになる前の「自分が壊れるのは怖いけどジョーカーは愛してる」みたいな微妙な表情が個人的にツボでした。あと、階段で下を見下ろしながら酸の中にジョーカーと飛び降りたことを思い出して泣きそうになってるハーレイが好き。とことんジョーカーが好きなんだなあと感じられて可愛いです。
 それと、少し声がダミ声になる瞬間があって、可愛い顔から微妙に汚い声が出てくるギャップがたまりません。

 でも友達をイジメんな!(日本語訳)って言ってたのは意味不明でしたが、ハーレイも短い間でも群れてたら本当に「お友達」になった感覚なんだろうなあと思いました。ハーレイの場合、地球の命運云々よりも「お友達」や「恋人」を優先させちゃうような気がします。要するに自分勝手な子供みたい。しかも空気読めない(笑)
 エンチャントレスが見せた幻想では普通のお嫁さんになっていて、それに対して「お嫁さん♡」とうっとりしていて子供っぽい。

 最後に、武器でバットやらハンマーを持っているのが可愛いです。物理。
 

●デッドショット(ウィル・スミス)
 主人公。どう見ても主人公。かっこいいです。いいところは彼がほとんど持っていった印象。正統派にかっこいいので語るべきことは少ないですが、最後にハグの練習?をしていたのが地味にツボです。


エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)
 この作品でカタルシスを得られたのは彼のシーンかな、と。チート級に強いのに自分の力にトラウマを抱えているなんて、少年漫画っぽいです。よくあるもともとは悪人じゃないけど環境のせいでそうなっちゃったんです〜みたいなキャラクター。たしかにそうなんだけど、犯してしまったことは変えられないのでお涙頂戴な雰囲気になったら嫌だなあと思っていたらハーレイが「背負いなさいよ」と一喝したので取り敢えず良かったです。
 最期はエンチャントレスの弟と爆発。ただの爆弾で死ぬの?と思いましたがいいところ持っていきましたね。いい意味で予定調和な感じ。そこが心地よかったです。だがトゥルーフォーム?なのか炎の神様っぽい姿になった時は昔見た日曜日の朝の特撮を思い出してしまった(笑) アメコミだとあの手のはお約束なんでしょうか…?
 あと、顔のタトゥーが素敵。本来の顔も見たいです。

 元ネタのコミックが読みたくなったキャラクターでした。


●リック・フラッグ(ジョエル・キナマン
 本作のマトモ枠で凄腕の軍人という設定でした。しかしピーチ姫敵にはよくやられそうになって助けられるシーンがやたら印象的だった。普通にかっこいいんですけどね……。直前に戦おうとしないディアブロが「プリンセスか?」と煽られていたので「いやむしろフラッグ大佐がプリンセス……」と思ってしまいました。次は(あるか分からないけど)戦闘シーンで見せ場があるといいね!


●エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)
 ラスボス。公式HPの50倍は綺麗な顔してました。じとっとしたいわゆるジト目が可愛い。しかしトゥルーフォーム?力を手に入れた姿はなんとなく受け入れがたい格好をしてましたね。彼女は結局人間に復讐したかったのかな、と思います。
 幻覚を見せる、瞬間移動、憑依の力を持っているようですが結局戦うときは物理だったので弟の方が強いんでしょうね。弟も物理だったけど。


●カタナ(福島かれん)
 思ったよりもちゃんと日本でした。取り敢えず中国とかベトナムとか、他の国の要素がなく、ちゃんと日本でした(笑)
 彼女は用心棒で、死んだ旦那の魂が閉じ込められた魂を喰らう妖刀を操ります。設定は結構好き。特に単純ですが泣きそうな、でも嬉しそうな声で「ここで死んだらあなたと一緒になれる」と言っていたのは良かったです。性格としてはクールで感情の読めない人物として描かれていますから、そんなカタナの感情が見えるシーンにはグッときます。

 そんな彼女のシーンでお気に入りなのは「ナイストゥミーチャ☆」と言ったハーレイに対して「殺すか」と返したシーンです。


●キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー
 名前を公式HPで知りました。何故キャプテンなのか分からないので元ネタが地味に気になります。
 見た目はただのおっさんだったけど、要所要所でいい味出してたかなあと思います。彼のシーンで好きなのはハーレイに手厳しいシーンと妖刀に話しかけるカタナにふざけた感じでアプローチするシーン。

 で、ぬいぐるみフェチって設定はどうなったの?


キラー・クロック(アドウェール=アキノエ・アグバエ)
 見た目のインパクトの割に空気で何だかなあと思ってしまいました。彼のシーンで好きなのは「俺は美しい」と言ってニヤリと笑うシーン。とてもとてもかっこいいです。もしも次があれば彼の活躍を見たいなあと思いました。


●アマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス
 スーサイドスクワッドを編成した張本人。だいたいこいつのせい。ヴィランで編成された部隊を作るならこれぐらい冷徹かつ非情な方がいいのかな、と、途中まで思っていました。例えやり方がゲスでも自分の仕事を完遂するために悪役に徹するキャラクターは「ゲスいから酷い死に方するだろうな、してほしいな」と思うこともありつつ嫌いじゃないんですね。

 しかし。

 しかし、このウォーラーは本当にただのゲスだった。びっくりしました。突き抜けてゲスだったのでなるべく未練なくやられてほしいです(笑)


ジョーカー(ジャレッド・レト
 ゲストキャラ。といってもハーレイ関連ではなくてはならない存在です。
 ポスターだとだいぶ出張るので主役級なのかと思っていたら登場シーンが少なくて驚きでした。でもジョーカーファンでもないのでこれぐらいで丁度よかったのかも。それに私はニコルソンジョーカーが好きなので……^^;

 このレトジョーカーはサイコパス感が強く分かりやすい狂気だったので「こいつ、ヤバイぞ!」とは思うもののニコルソンジョーカーのように「なんだかよく分からない不気味さ」はなかったかなと思いました。
 ただ、とても良かったのは手の甲に掘られた笑顔のタトゥー。これを口元に持っていくシーンはおおっ!と思います。ヴィジュアル的にも最高でした。それから酸の中に飛び込んでいくシーン。あのシーンが一番「イッちゃってる」感じがしてゾクゾクしました。こういうシーンが沢山見たいなあ。



 長くなりましたが、全体を通して気軽に見ることができるパンクで刺激的なエンタメとしてとても面白い映画でした。ヴィジュアルだけでも満足できます。音楽はボヘミアンラプソディーのサビを流さなかったのは意図的なのかなんなのか(笑)細かい部分で気になることは多いですが許容範囲。
 私の映画の引き出しは浅いのですが、刺激が欲しくてちょっぴりバイオレンスな映画が見たい、でもタランティーノみたいなクライム映画はちょっと…な気分のときに気軽に見れるなと思いました(笑)



監督:デビッド・エアー
製作:チャールズ・ローベン
   リチャード・サックル
製作総指揮:ザック・スナイダー
      デボラ・スナイダー
      コリン・ウィルソン
      ジェフ・ジョンズ
脚本:デビッド・エアー
美術:オリバー・スコール
衣装:ケイト・ホーリー
音楽:スティーブン・プライス