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裏庭の鶏

映画と本と、時々舞台

『真田十勇士』 感想

映画

 どうかなって思いつつも邦画時代劇が見たかったので見ました。日曜日の朝に全15話ぐらいのドラマで放送すればファミリー層に受けたんじゃないかと勝手に思いました。派手なアクションは才蔵除き結構好きです。
 けど、全体的にあともうちょっとで面白くなったのでは、と思ってしまいました。これは好みなのかも。

 初日に見に行きましたが結構年齢層がバラけていたのも印象的でした。

 以下、ネタバレ含む感想です。ちょっぴり辛口(特にキャラクターに対して)なのでご注意ください。

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 まず、初っ端からアニメが始まって度肝を抜かれました。本当にびっくりした。しかも長い。
 歴史上の人物が肖像画からぬるっと実写になる演出から始まりわくわくしていたから、アニメが流れて何事かと(笑) しかしアニメパートの長いこと! キャラクター紹介をアニメで表現するなんて斬新と思ったけど長すぎましたね。若干イラついていたらピコーンという音とともに「アニメ映画ではありません。あと数十分で本編が始まります」のテロップ。苦笑。

 スーサイドスクワッドの時も感じたのですが、こういうキャラクター紹介って映画で表現するのは大変だなあと思います。どちらかといえばスーサイドスクワッド式に第三者が紹介していく方法の方が真田十勇士のようにダイジェストでやられるより好きです。

 そうしてやっと実写パート=本編が始まりますが、まだ真田十勇士ではなく真田九勇士。そして登場しない大島優子。ポスターででかでかと出ているから主役級だと思ったけど女性キャラだからポスターに大きくのっていたんですね。十人目は真田九勇士を名乗る浪人、甚八になるわけですが、うん、まあ。なんでほいほい仲間にしちゃうのかこの時点では分からず首を傾げます。この後ネタばらしがきて策士!となりましたが。甚八なんか好きになれなくて(-_-;)

 さて、このお話は大まかに言うとアニメパートで真田幸村と猿飛佐助の出会い〜仲間を集め真田十勇士(アニメパートでは九人まで)を結成までを描き、本編では大坂冬の陣大坂夏の陣を描きます。予告にもありましたがこの物語の幸村はヘタレ男で容姿端麗であるから「たまたま運が良かった」出来事も「策略」と受けとられてしまった、顔がいいと辛い、などと嘆きます。
 そこで佐助が嘘を真にするために真田十勇士真田幸村を助け「世の中に大嘘をつく」訳です。それを知っているのは佐助と彼の幼馴染の霧隠才蔵のみ。

 ストーリー自体はエンタメとして面白そうなのですが……全体的に詰め込み過ぎているのかな、という印象でした。例えば仲間が集まったのは良いけど、特にエピソードがないまま戦に突入するので誰と誰が仲が良かったという情報も匂わせる程度です。苦楽を共にした大切な仲間感もあまり感じられません。だいたいなんでこの人らは真田幸村に仕えているのかも分からない。というか忠誠心というよりも真田幸村すら真田十勇士の仲間のような印象。
 そして真田幸村がヘタレというエピソードも薄いので夏の陣を前に自ら戦略を練り戦いに挑む決意をする幸村にも何か感動があるわけでもなく。死にゆく十勇士の仲間にも感情移入できず。

 もっと彼らの仲間同士のエピソードがあればまだ感動できたかもしれないので本当に色々とおしいです。ただ、戦闘シーンは迫力あったので、いっそアクション映画として変に感動させようとしない方が良かったのではないでしょうか。流石に仲間が死んだだけではあんまり感動できないので。

 色々と文句を書いてしまいましたが、アクションは才蔵のパラグライダーを除いて楽しめたのでそこだけは見に行って良かったと心から思いました。
 
 この作品は舞台もあるそうなので舞台の方はもっとシンプルに、そしてブラッシュアップされているのなら見てみたいと思いました。

 以下、キャラクター別感想です。こちらも少し辛口になりますのでご注意ください。

●猿飛佐助(中村勘九郎
 ギャンギャンと常にうるさいキャラクターが苦手なので思ったよりも彼が苦手な部類のキャラクターだと序盤で感じてしまってあちゃーと思いました。
 が。基本的にぎゃんぎゃんとうるさい佐助も夏の陣前に何かを考えていたり甚八を仲間にしたのは秀頼と似ていたから影武者にするためと匂わせていたりと「策士」らしい面を見せました。
 この佐助は「面白いか面白くないか」で行動する、まるで子どものようではあるものの少年らしい青さがない。子どものように「面白いこと」を追い求める反面大人のように利害をはかることもできるのだろうな。と思いつつも裏切り者がいると言われて激怒したり裏切り者だった十蔵をあっさりと許したり(ここはもしかしたら十蔵がもう裏切らないという自信があったのかも)とやはり裏表があまりなさそうな、無垢な少年のような印象も受けました。決して無垢な少年ではないのでしょうけど(笑)
 
 そして佐助はコメディパートで光ってた! セリフまわしというか、間というか……。確実にうっとおしいヤツなのになぜかクスリと笑ってしまう。特に火垂と才蔵との絡みは最高でした。
 また、真田親子が果てた時の鬼のような形相、才蔵と刺し違えた(フリの)時の死に様が凄い。常にヘラヘラチャラチャラしていた分、本当に悪くてたまらない!という顔にそのまま家康を殺しに行くかと思いました。死ぬ(フリ)時も白目を剥いてガクリと倒れるのが「あ、殺されたんだ」と思わせゾクゾクします。

 でも猿飛佐助は真っ直ぐで自分に正直な気持ちの良いキャラクターだと思います。


霧隠才蔵松坂桃李
 イケメン以外に言うことのないイケメン。どちらかというと可愛い顔だなと思いました。

 佐助と比べてクールで冷酷そうな一面も見せますが、きっと彼は佐助よりも子ども。しかも青さという点で子ども。
 何故彼が抜け忍になったのかイマイ説明不足だったように思えましたがきっと佐助が言っていたのと同じで佐助が抜け忍となった理由と同じか、反抗心で抜け忍になってそう。格好つけたい子どもって感じするんですよね。個人的には夏の陣が終わって船に乗って幼馴染とじゃれ合ってる方がいきいきしていたし才蔵の「素」が出ていた感じがしました。それまでのクールさはクールな自分を必死に演じていたような雰囲気。

 あと!彼に関しては!!パラグライダーシーンで毎度笑ってしまいました!あれはないです!

 
真田幸村加藤雅也
 普通に顔がかっこいい。個人的には情けないエピソードが足りないからラストの男前っぷりになんの感慨も抱けず普通に男前でした。でも真田親子の死に様にはカタルシスを得ることができました。
 でもエピソードとしては足りなかったけど、戦を前にしてぱちぱちと瞬きを繰り返していて本当に緊張している感じしました。応援したくなる(笑)


淀殿大竹しのぶ
 強い女性ですね。かっこよかったし凛としてはいるものの自分勝手でなんとも言えない。結局「母の愛」みたいにオチをつけていましたが…美談っぽくなっていたし……。あまり人間味を感じられなかった淀殿でした。

根津甚八豊臣秀頼永山絢斗
 いったいこいつはなんだったのか。使えない替え玉っぽい立ち位置で仲間との軋轢もあったのにサラッと流されてて……。本当にこいつはなんだったのか。


筧十蔵高橋光臣
 最初に十蔵「ちゃん」なのかなと思ってたのにただのキャラ付けだったのが残念でした。やり過ぎ感が否めなかったけど、最終的にはなかったことになってるあのキャラ付けいるかなあ?
 あと鎌之助の肩に寄りかかって拒否られてるシーンはじわじわツボでした。彼と特に行動していたんでしょうね。夏の陣で背中合わせに鎌之助と戦う(やられる?)シーンは二人とも楽しそうだったのが印象的でした。


由利鎌之助加藤和樹
 イケボ。彼の声とても好きです。上でも書きましたが十蔵とのエピソードがもう少しあれば、十蔵が裏切り者と知った時の切ない顔に説得力があったんだけどなあ。
 しかし鎌之助は無骨な印象を受けますが来世でこうしたい、ああしたい、と話すシーンでほのぼの一家を築きたいと漏らしていたのが印象的。似合わね〜とからかわれていましたが子煩悩な父親になれそうだと思いました。
 最期は弁慶のごとく立ったままでしたが、死に顔が綺麗でした。多分今作の中で死に顔が一番綺麗。

 舞台の方では才蔵を演じているらしく、公式HPを見たら浮世絵に出てきそうな才蔵でした。松坂才蔵は女の子から黄色い声をあげられていそうですが加藤才蔵は女性を侍らせてそうな顔してますね。


●三好青海(駿河太郎)・三好伊三荒井敦史
 すいません。どっちがどっちだか分からなくなってました。駿河太郎さんは一度拝見しているのに……(-_-;)
 完全に賑やかし要因になってましたね。こういうキャラも嫌いじゃないですが、ドレッドヘアに驚いた。でも彼らはあくまで才蔵の手下で真田幸村の家臣ではないんだろうなあと漠然と思いました。


海野六郎村井良大
 死んでもカタルシスを得ることができなかったのが自分でも驚き。でも他の十勇士に比べてちゃんと真田幸村の家臣だったので好きです。

望月六郎(青木健)
 死に様が好き。勢いが他の追随を許さない。彼の活躍がもっと見たかったです。

真田大助(望月歩)
 滑舌やら演技やらが子役っぽい印象だと思っていたら2000年生まれでした。舌っ足らずで情けなくてふわふわしていて、家康のところに行くまでに落馬して死にそうだなと思いましたが意外と男を見せていましたね。


●火垂(大島優子
 正直、このキャラクターいるかなあというのが見終わった直後の感想。今思うと不二子ちゃん的な立ち位置なのかも。
 火垂は佐助の言う「すっごい女の子」の方が素で、クールに振る舞うのは無理しているのだと感じました。くノ一に生まれていなかったら可愛い娘さんになっていたに違いない。


●仙九郎(石垣佑磨
 パンクな忍者。才蔵だけ狙って佐助を狙わない理由が最後まで分からなかったんです。火垂のこと好きだったの?


 全体を通してなんともおしい作品でした。いつかドラマ化とかしたら一話だけでも見てみようかな。

監督:堤幸彦
脚本:マキノノゾミ
   鈴木哲也
制作指揮:中山良夫
制作:大角正
   佐藤直樹
   熊谷宣和
   薮下維也
   永井聖士
   安部順一
   弓矢政法
   長坂信人
美術:清水剛
音楽:ガブリエル・ロベルト