裏庭の鶏

映画と本と、時々舞台

『グッバイ,サマー』 感想

 気持ちの良い映画でした。14歳の少年は日々成長していく、みたいな。鑑賞後の満足感はほろ苦いラストだからこそ味わえたのかも。

 以下、ネタバレ含む感想です。

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 ダニエルが主人公のこの映画、この年代独特の悩みを抱えそれを自分の中で消化できずにいる。家族のことや自分のこと、恋愛のことなどなど……。他人の目が気になるダニエルは女の子のような容姿が気に入らないけど、かといって周りと一緒は嫌だ。なんとなくそういう気持ち、分かります。まさに思春期って感じですね(笑)


 ダニエルのちょっと不機嫌そうな顔が好きです。ちょっと刺激すると爆発しそうな危ない印象の顔。けれどその分楽しそうな顔をすると可愛らしい少年の顔をするんです。
 まだまだ子どものようで、しかし本人はもがいて子どもから抜け出そうとしている。そんな印象でした。

 一方のテオは周りと違う少年で、自分をしっかりと持っている感じがします。ダニエルと比べるとだいぶ大人びている少年。それによく気の利く優しい少年です。ダニエルの個展でのシーンは不覚にも「テオかっこいい!」と思ってしまいました。
 けれどテオの家庭はテオをダニエルのように少年のままでいさせてはくれないことがうかがえます。テオは大人びていても、やっぱりまだまだ少年。飛行機が怖いとか、車の許可が簡単におりると思っていたところとか(笑)
 けれど、それを一番に感じたのは寄宿学校に転入させられることになり、不安げな顔でダニエルを振り返るシーンでした。

 この物語はダニエルの物語であり、全てはダニエル視点です。だからテオの少年らしい弱さが見えたラストはもしかしたらダニエル自身の成長の現れだったのかも。
 最後の最後、ラストシーンはダニエル視点ではなかったけれどテオの言ったようにローラに以前のような恋心を抱かなくなった(と思われる)ダニエルはきっと自分の成長に気づいていないんだろうと思いました。


 またこの映画の大きな魅力はダニエルとテオの珍道中でした。まず、車を小屋にしようという発想だけでも面白い。それに加えてテオの動機が「おっぱい」になっており割りと必死(笑)
 個人的に面白かったのはやっぱりダニエルが「サムライヘアー」になったところでした。ベタだけど外さないネタだなあ。

 気軽に楽しめ少しほろ苦さを感じるけれど、それでも満足感のある映画でした。

●スタッフ
監督/脚本:ミシェル・ゴンドリー
製作:ジョルジュ・ベルマン

●作品データ
原題 Microbe et Gasoil
製作年 2015年
製作国 フランス
配給 トランスフォーマー
上映時間 104分